2016年12月26日 (月)

厚生労働省相模原事件検討会報告書に対するDPI日本会議意見

12月8日に厚生労働省は「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告書を公表しました。
それに対して、私たちDPI日本会議は意見を表明します。

◆厚生労働省「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」報告書の概要版と本文は下記からダウンロードできます。

以下、DPI日本会議意見全文
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2016年12月26日
厚生労働省相模原事件検討会報告書に対するDPI日本会議意見

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

2016年7月26日に相模原市の障害者施設で19人もの命が奪われ、27人が重軽傷を負うという痛ましい事件が起きた。
厚生労働省は、容疑者の精神鑑定の結果も待たずして「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」報告書(12月8日)を公表した。
同報告書は結語で「今後、厚生労働省に設置された『これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会』等において、詳細な内容の検討を行っていく」との意向を示しており、おそらくそこでの検討内容が今後、精神保健法改正3年後の見直し(2017年)に盛り込まれるのではないかと危惧される。
私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国各地の93の障害当事者団体から構成され、精神障害の当事者団体も会員に含まれる、障害の種別を越え障害のある人もない人と共に生きられる社会に向けて運動を行っている団体である。
以下、今回の厚労省検討会報告書に対するDPI日本会議としての意見を発信する。
そもそも、容疑者は現在精神鑑定中で、容疑者の心身の状況や、ましてや薬物依存や精神障害と事件との因果関係は不明な状況にある。前提となる情報が出ていないにもかかわらず、精神医療に焦点化した検討自体が問題である。いかに偏っているかは、その構成からも明らかである。
すなわち、報告書には3つの視点として、
1.共生社会の推進、
2.退院後の医療等の継続的な支援を通じた社会における孤立の防止、
3.社会福祉施設などにおける職場環境の整備
があげられている。
しかし、1、3が各2ページずつに対して、2が9ページで構成されていて、精神医療に関する部分が本文の8割近くをも占めている。
「3つの視点」と言いながら、実質的には精神医療に大きく偏り、一方、共生社会の推進や社会福祉施設のあり方などについては一般的な方向だけで具体性に欠けている。
また共生社会の推進は、内閣府などで行っている啓発・広報が記述され、学校教育における「心のバリアフリー」も項目としてあげられているだけである。
さらに、警察の対応については、「なお、容疑者については、その手紙の内容等から、刑罰法令を適用して検挙することは困難であり、また、これらの一連の対応は法令に沿ったものであった」(P15)と木で鼻をくくったような記述があるのみだ。
なぜ事件を防げなかったのか、警察の具体的な対応はどうだったのか、何ができて、できなかったのか、そもそも措置入院通報としたことは適切だったか等については全く検証されていない。
「地域で孤立することなく安心して生活を送ることが可能となる仕組み」(P8)は、措置入院に限らず、一般的に必要な地域での支援体制のはずである。
しかし、それは通院者および任意入院者も含めた総合的な医療や福祉の支援にかかる課題である。
ところが、ことさらに「措置入院」を取り上げて「退院後のフォロー」が強調されることで、それは否応なく監視の役割を担うことになる。
また「児童虐待防止の例も参考に、制度的な対応を検討する必要がある」(P12)などと、
措置入院者が犯罪者と同等に扱われている。
「措置入院の過程で認知された犯罪が疑われる具体的な情報の共有化」(P15)など、精神医療が事実上、警察行政の一端を担わされることにもなりかねない。
そして、「通報後の措置入院決定のばらつき」(P15)を問題視するかのような記述がある、前述の「警察の無謬性」が前提とされれば、「警察から通報があったにもかかわらず措置入院決定をしないのは問題」と、結局、措置入院の強化の方向での見直しになるのではないかと危惧される。
容疑者がその優生思想や「意思疎通ができない障害者」「車いすに縛りつけられて一生を過ごす」と表現した障害者観を持つに至ったことと、入所施設での障害者の生活状況やスタッフによる支援のあり方はどうだったかについても全く検証されていない。
以上のように、分量的にも内容的にも精神医療の問題に収斂させた内容となっており、共生社会の推進を阻害している社会のあり方を問うものになっていない。
日本の精神障害者に係る法制度がライシャワー事件(1964年)や大阪教育大学附属池田小学校事件(2001年)など、こうした不幸な事件を契機に精神障害者の隔離・分離を強める方向に変わってきた歴史を再び繰り返してはならない。
私たちは、「措置入院の手続き(症状消退届の記載に関する)と退院判断の仕方を厳格に、また退院後、通院継続をしなくなった際の保健師等の連携について等」に重点を置いた今後の検討に反対する。
DPI日本会議に加盟する精神障害の当事者団体は精神科病院に入院している人への訪問活動や地域における電話相談・勉強会・交流会など、精神障害のある人たちが他の人びとと同様に地域で生活を行えるよう活動を粘り強く重ねてきている。
私たちは他の障害者団体と共に9月26日「相模原障害者殺傷事件の犠牲者を追悼し、想いを語る会」に集い、亡くなった19人ひとりひとりに思いを馳せ追悼の機会を持った。
この会において、事件の容疑者が話していたと言われる「障害者はいなくなればいい」という考えに抗議すること、事件を契機に精神科措置入院の強化や施設や病院の閉鎖性を高めることに抗議すること、障害の有無によって分け隔てられないインクルーシブな社会を目指して地域生活支援の飛躍的拡充を求めることが参加者の一致した意見として確認された。
あらためて、この事件を生み出した背景、社会のあり方について、障害当事者の立場から提起し続けていく決意を明らかにするものである。

以上

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2016年8月 3日 (水)

相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見

2016年8月2日午前、相模原事件についての政党ヒアリングが行われ、障害者団体としてDPI日本会議も出席をし、意見書を提出しました。

他に出席された団体からも、「施設の安全確保」「措置入院制度の見直し」に対する危惧、反対意見が述べられました。
議員からも障害者団体の意見をふまえて、省庁に対して質問・意見が述べられました。

DPIの意見書に述べている通り、今回の事件をきっかけにして、障害者を隔離、排除していく施策が進められるならば、容疑者がいう「障害者なんていなくなればいい」という社会に突き進んでいくことになります。

そうしたことにならないように、私たちの側から「優生思想を許さない」、「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」というメッセージを発信し続け、取り組んでいきたいと思います。

▽8月2日相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見(ワード)

以下全文
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2016年8月2日

相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

日頃より障害者の権利の増進のためにご尽力いただき、心より感謝申し上げます。
わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで91の団体で構成されている障害当事者団体です。

2016年7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた障害者大量殺傷事件によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
また、深い悲しみや恐れを持たれているご家族に対しても心からお見舞い申し上げます。

私たちは、事件の全容と背景の解明を行うことを最優先とし、推測などをもとにした拙速な対応は、障害者への偏見や差別を助長する恐れがあるため、避けるべきであると考え、以下、意見を述べます。

1.今回の事件に関する基本的な立場
相模原での障害者大量殺傷事件で問われるべきは、むき出しの優生思想に基づく行為とそれを生み出す社会状況である。排除的な社会ではなく、インクルーシブな社会への転換が求められる。

2.で述べる通り、現在打ち出されている「再発防止」は、障害者を社会から隔絶、排除する方向に進む危険性を有していると考える。
もし、そうした方向が打ち出されるならば、今回の事件の目的として言われている「障害者がいない世界」に私たちの社会は進んでいくことになる。
あってはならない今回の事件に対して、その問題点をしっかりと受け止めた上で対応をしていくことが求められる。
あやふやな情報を元にした「対策」によって、方向を見誤らないようにして頂きたい。
・DPI日本会議声明
・共同通信2016年7月27日配信記事

2.「再発防止」として示されている事項について
(1)「施設の安全対策」について
通常の社会生活における安全対策は必要であろうが、「防犯」名目の下、障害者入所施設がより社会から隔絶された状況になり、入居者の外出や地域の人々との出会いが制限され、入居者のQOLが低下することになってしまわないか、大きな懸念を持たざるを得ない。

(2)「措置入院の在り方の見直し」について
報道によると、容疑者は犯行後、警察の取り調べに対して「障害者なんていなくなればいい」と語ったという。
また、重度重複の人たちを狙い撃ちにしたこと、家族に対しては「突然関係を絶つことになり申し訳ない」と述べているが、障害者本人に対する謝罪はないとも伝えられている。絶対認められない考えではあるが、「優生思想」という点では一貫したものを見て取れる。しかし、「思想」の問題を精神医療の対象とするのは間違いである。そもそも、容疑者が措置入院の対象者であったかについても検証が必要である。今回の事件を受けて、「措置入院の在り方」を見直すのは、さらなる誤謬である。こうした検討は精神障害者への偏見と隔離を強めることになり、私たちは検討会の設置に反対する。

3.今回の事件を受けてなすべきこと
2014年に批准した障害者権利条約や、それに基づく改正・障害者基本法、障害者差別解消法などに示されている、「障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会」(インクルーシブな社会)を基本とした対応がなされるべきである。

(1)施設からの完全な地域移行計画と地域生活支援の飛躍的拡充を今回の事件の背景に、とりわけ重度の知的障害のある人、重複障害のある人、高齢の障害のある人の地域移行が遅々として進んでいない状況があるのではないか。
事件に遭われた施設の管理体制を直接批判するものではないが、今後の在り方として入所施設ではなく、地域での生活を基本に進めていくべきである。
国も「施設からの地域移行」を掲げて10年余り経つが、今回の事態をきちんと受け止めて抜本的な地域移行策を打ち出すべきである。
施設や病院に誰も取り残されることなく完全な地域移行が可能となるような計画と、どんな重度の障害があっても地域で暮らせるように重度訪問介護などの地域生活支援を飛躍的に拡充して頂きたい。

(2)「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」との毅然としたメッセージを社会全体で
多くの障害者、関係者は今回の事件に強い衝撃と怒り、悲しみとおそれを抱いている。
私たちDPIは優生思想を絶対認めない。「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」といったメッセージを社会全体で共有していくことが求められている。

優生思想というと、戦前のナチス時代にあった過去のことと受け止められがちである。
しかし、日本では「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に掲げた
優生保護法が1996年まで続いた。

障害者や関係者の粘り強い運動でようやく廃止されたが、優生保護法下で行われた不妊手術などの被害者に対する謝罪や補償は、いまだになされていない。
過去を反省し、「優生思想は認めない」とのメッセージを託し、政府は優生保護法の被害者に対する謝罪・補償を早急に行うべきである。
なすべきは、措置入院制度の在り方検討会の立ち上げではなく、まず優生保護法の被害者への謝罪を行い、検証・補償の検討会の立ち上げを行うことである。

以上

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2016年7月27日 (水)

緊急抗議声明:相模原市障害者殺傷事件に対する抗議声明

7月26日に相模原市で起きた障害者死傷事件に対し、DPI日本会議は抗議声明を出しました。
▽相模原市障害者殺傷事件に対する抗議声明

(ワード)
(PDF)
DPI日本会議は断固抗議してまいります。

以下、抗議声明全文
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2016年7月27日
相模原市障害者殺傷事件に対する抗議声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで91の団体で構成されている障害当事者団体である。
2016年7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた障害者殺傷事件によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
現時点で事件の全容は不明でありその解明は今後を待たなければならないが、報道によると容疑者は深夜に施設に入り、障害者を刃物で次々と襲い、殺傷し、神奈川県警の調べに対し「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の供述をしているとも伝えられている。
もし、これが事実だとすると、障害者を「あってはならない存在」とする優生思想に基づく行為に他ならず、私たちDPI日本会議はここに強い怒りと深い悲しみを込めて断固として優生思想と闘っていくことを改めて誓う。
近年、閉塞感が強まる中、障害者をはじめとするマイノリティに対するヘイトスピーチやヘイトクライムが引き起こされる社会状況の中で、今回の事件が起きたことを看過してはならない。
ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを許さず、それらが引き起こされる社会状況を変革し、誰もが排除したりされたりしないインクルーシブな社会づくりを進めていくことが求められている。
障害者分野では、2014年に障害者権利条約が批准され、今年4月からは障害者差別解消法が施行されるなど、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会=インクルーシブな社会づくりを目指した取り組みが進められてきた。
私たちは、今回の事件にひるむことなく、障害者の生命と尊厳がまもられ、様々な権利が行使できるように、インクルーシブ社会に向けた活動をより一層強める決意である。
なお、容疑者とされる者の入院歴等が一部マスコミで取り沙汰されているが、事件の全容が解明されていない中で偏見と予断を煽りかねない報道は差し控えられることをあわせて求めるものである。
以上

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2015年11月26日 (木)

■ご報告■ 茨城県教育委員の発言問題について、茨城県庁に抗議に行ってきました‏

先日、茨城県教育委員会の委員が「茨城では障害児の出生を減らせる方向に」と発言した問題で、お伝えした通りDPI日本会議は11月20日、橋本茨城県知事と茨城県教育委員長あてに抗議文を出しました。

▽茨城県教育委員会委員の発言に対する抗議文(ワード)

そして連休明けの11月24日(火)、DPI日本会議と地元茨城県のDPI加盟団体であるCILいろはとつくば自立生活センターほにゃらのメンバー10名が、抗議文を手交するために茨城県庁を訪問しました。対応したのは茨城県保健福祉部障害福祉課課長補佐と、茨城県教育庁課長補佐でした。

訪問はおよそ40分間に渡り、まず、抗議文を読み上げて手渡しをしました。そして、全国青い芝の会元会長でDPI日本会議常任委員でもある金子和弘さんが、ご自身の生い立ちを中心に長年の「青い芝の会」の優生思想との闘いへの想いを語られました。

DPI日本会議は今回の出来事を「障害者に対する重大な人権侵害」と認識しています。また、教育委員会の委員の発言であったということも大変大きな問題であると考えています。

発言した委員が辞任したことに関しては、「今回のような発言は、社会にまだ優生思想が根深く残っている証拠。
大きな怒りと悲しみを感じているが、発言者個人を糾弾する意図でやってきたのではない。今後、これを契機として、茨城でも優生思想をなくしていくため、こうした問題を考える話し合いの場、あるいは勉強会などの啓発の場を県や教育委員会と障害者団体で一緒に開催すればいいのでは」と、私たちの考えを伝え、今後の取り組みについても提案をしてきました。

起きてしまったことに対して、どのようなアクションを起こして未来に繋げるかが重要です。障害の有無によって分け隔てられない共生社会の実現のためにも、今回の問題から私たち自身、改めて運動継続の必要性を再認識しました。

茨城県では平成27年4月1日から、「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」が
施行されています。条例の今後のブラッシュアップに向けて、DPI日本会議は地元の障害者団体とも今後も連携を深め、条例の名のような、誰もが「幸せに暮らすため」の社会づくりに向け、優生思想と戦います。

<当日の様子>


今回のDPI日本会議の抗議行動がニュース記事に取り上げられました。
▽障害児の出産:発言の茨城教育委員の辞職が決まる
毎日新聞 2015年11月25日 00時48分(最終更新 11月25日 00時54分)

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2015年3月10日 (火)

「マラケシュ条約」批准と「読書バリアフリー法」制定を目指して

2013年6月、国連の専門機関である世界知的所有権機関において「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(仮称)」が採択されました。私たちは、日本盲人会連合、弱視者問題研究会とともに、マラケシュ条約批准と著作権法改正、そして読書バリアフリー法の制定を求めています。以下、声明文。
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「マラケシュ条約」批准と「読書バリアフリー法」制定を目指して
1.はじめに
  国連の専門機関である世界知的所有権機関は2013年6月、モロッコのマラケシュで「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(仮称)」(以下、「マラケシュ条約」とする。)を採択した。
2015年2月現在、6か国が批准しており、日本も締結を目指し、既に文化庁では著作権法改正が審議されている。マラケシュ条約の目的は「発行された著作物を利用する機会を促進する」、つまり障害があっても多くの本を読めるようにすることである。対象となる著作物は、書籍や雑誌等の文字情報であり、受益者は視覚障害者、文字の読み書きに困難のある学習障害者、寝たきりや手が不自由な身体障害者等である。条約を締結するには、著作権法で著作権の制限や例外規定を設けることと海外の締約国とアクセシブルな図書データの輸出入を可能にすることが必要である。
 私たちはマラケシュ条約を批准する際に、著作権法改正と「読書バリアフリー法(仮称)」の制定を求めている。著作権法については、マラケシュ条約の受益者を第37条第3項の権利制限対象者に加えるだけでなく、アクセシブルな図書を増やしていくために著作権法施行令により複製が認められているものの規制緩和や権利制限対象者への公衆送信の法定化も求めている。
 「読書バリアフリー法」では、読書障害者も健常者と同じように自由に本を買ったり、借りたりできるようにするための環境整備を求めたい。具体的な課題は以下の通りである。
2.読書障害者とは?
印刷した書籍を読むことが困難な人を読書障害者と定義している。日本では長年、視覚障害者だけが読書に困難があるとされてきたが、他にも多くの読書障害者がいる。例えば下記の通りである。
○視覚障害者
 全盲の場合は点字、読み上げソフト等を利用して読書が可能となる。弱視の場合は文字を拡大して読書をしている。電子書籍であれば読み上げソフトの利用や文字の拡大が可能となるため、全盲も弱視者も読書が可能となる。
○学習障害者の1種である読字障害者(ディスレクシア)
2009年に著作権法が改正され、ディスレクシアと呼ばれる読み書きに困難のある学習障害者も著作権法上、権利制限規定の対象に加えられた。
○上肢障害者
マラケシュ条約は、寝たきりや上肢障害により本が持てなかったりページがめくれない人も受益者と定義している。上肢に障害があると、ページをめくったり本を持つということが出来ないために本を読むことが難しい。自動めくり機といった読書補助器具もあるが、機材が大きく場所を取ること、高価である等の理由で利用している人は少ない。こういった事情で読書を諦めている人も多い。電子書籍であればパソコン等での読書が可能になる。
○高齢者
加齢により視力や認知力が衰え、読書が困難になった高齢者も潜在的に相当数いると思われる。
○その他の障害者
マラケシュ条約では受益者と定義していないが、分かりやすい表現であれば理解できる知的障害者、文字は読めないものの手話であれば理解できる聴覚障害者、漢字を平仮名に直したりルビが振ってあれば理解できる外国人などのような読書困難者もいる。
 今後これらの読書障害者や読書困難者が本を買うにしても借りるにしても健常者と同じような読書環境を整えることはすべての国民の心豊かな生活を支えるとともに活力あふれる社会の実現に資すると言える。
3.本を「買う」という商業的な視点からの期待
 健常者が書店やネットで本を購入しているのと同じように、読書障害者もアクセシブルな電子書籍が買えるようになることを期待したい。本来、読書障害者が求める媒体は点字、音声、拡大文字というように障害の種類や程度によって様々である。しかし現時点では出版社が本の発売と同時にこれらの媒体を保障するのはほぼ不可能である。ただ近年普及してきた電子書籍がアクセシブルなものであれば、瞬時にほぼ正確に自動点訳したり、スクリーンリーダーで読み上げさせたり、見やすい字体や大きさに拡大することができる。つまりアクセシブルなデータがあれば、多くの読書障害者に時差なく文字・活字文化の恵沢を享受することができるのである。一部の出版社は本にテキスト引き換え券を添付し、本を購入した視覚障害者等にテキストデータを送付しているが、これも有効な配慮の一例である。このように当分の間、アクセシブルな電子書籍の提供が「One source, Multi Use」の鍵となり、出版における読書障害者への合理的な配慮と言える。
4.図書館から本を「借りる」という視点からの課題
(1)サピエ図書館
 全国視覚障害者情報提供施設協会が運営するインターネット上の電子図書館「サピエ図書館」の安定的な運営には、財政的な問題とサーバーの容量の限界という問題がある。現在サピエには約16万タイトルの点字図書データや約6万タイトルの録音図書データがアップされており、視覚障害者を中心に約1万3千名の読書を支えている。しかしこのサピエ図書館は2009年に国の補正予算で立ち上がった後、主に厚生労働省からの補助金と利用者からの寄付金で運営されており、厳しい財政状況が続いている。またアップされているデータのほとんどは点字図書館とボランティア団体で作成されたデータであり、公共図書館等で作成されたデータをアップすることはサーバーの容量からしても、人的な労力からしても難しい。
(2)国立国会図書館
 国立国会図書館の障害者サービスは着実に進展してきているが、更なるサービスの充実が期待される。2009年の著作権法改正により国会図書館も著作権者の許諾を得なくても視覚障害者等にアクセシブルな媒体を製作したり、自動公衆送信ができるようになった。そして2014年1月からは国会図書館が全国の公共図書館で製作された録音図書データと点字図書データを収集し、視覚障害者等に配信するという事業を始めた。同年6月からはサピエ図書館との連携も実現し、公共図書館で製作されたデータは国会図書館が収集し、サピエを通してダウンロードできるようになっている。(以下、「サピエ・NDLネット」とする。)
※NDL・・・National Diet Library(国立国会図書館)の略
 今後サピエ・NDLネットが所蔵するデータは数としても種類としても増えてくることが予想される。しかし、前述の通りサピエ図書館のサーバーには既にあまり余裕がない。一方国会図書館のサーバーの容量は膨大であるため、将来的にはすべてのアクセシブルなデータの倉庫としての役割が期待される。そしてその国会図書館のデータベースを核として広く全国からアクセシブルな図書データを収集し、一元的に管理することが期待される。
 またこのサピエ・NDLネットがどこからアクセシブルなデータを収集するかについても課題がある。現在は点字図書館と公共図書館に限定されているが、マラケシュ条約批准に伴う著作権法改正が行われた暁には大学図書館や地域のボランティア団体等からも広くアクセシブルなデータが収集されることが望まれる。
 サピエ・NDLネットが収集している図書は、点字図書データと録音図書データがほとんどだが、これからは弱視者や学習障害者、上肢障害者、障害学生にとって有用なテキストファイルやEPUBなどのアクセシブルな電子データも収集し、配信していくことが期待される。
 また国立国会図書館デジタルコレクション」は、国内最大規模の資料のデジタルデータを有している。そのほとんどは画像データであり、読書障害者にとっては残念ながらアクセシブルではない。そこで、これらのデータをテキスト化をはじめとするさまざまな方法でアクセシブルな形に整え、読書障害者がアクセスしやすい形でサピエ・NDLネットに提供することが望ましい。それによって、読書障害者が健常者と同じように膨大な資料にアクセス可能になることを希望する。
(3)学校図書館
 障害児の在籍する学校の図書室には、今後サピエ・NDLネットと確実につながり、必要に応じてバリアフリー図書がダウンロードできるという体制が求められる。例えば盲学校の図書室には点字図書や拡大図書、録音図書などが置かれているが、スペースには限界がある。そこでどの図書館でも容易にサピエ・NDLネットに接続し、更に多くの本が提供できるようになればよいが、現在サピエにつなぐには年間4万円の費用がかかる。よって現在盲学校でさえサピエに加入できていないところもある。インクルーシブ教育の進展に伴い特別支援学校に限らず、小・中・高校にも視覚障害児や学習障害児、上肢障害児が在籍するケースも増えてくるだろうが個々の図書館でアクセシブルな媒体を所蔵するのは現実的にはかなり難しい。そこで地域の学校でも全国で蓄積されたデータベースを利用できるようにすることが望まれるわけだが、やはり年間4万円が予算化できるか、疑問である。従ってすべての特別支援学校や読書障害児が在籍する学校には財政的な負担なく、サピエ・NDLネットにつなぎ、読書障害児がどの学校に在籍していようとも平等な読書環境が提供されることが望まれる。
(4)大学図書館・障害学生支援室
 大学における障害学生支援にもサピエ・NDLネットのメリットを最大限活用することが期待される。これまで障害のある大学生の教科書や教材の保障は各大学の障害学生支援室が中心になって進めてきた。2009年の著作権法改正により、「大学等の図書館及びこれに類する施設」が著作権者の許諾を得なくてもアクセシブルな媒体の製作ができるようになったが、障害学生支援室が「類する施設」に当たるかどうかの解釈が曖昧であったため、他大学でも有用かも知れないデータが一大学内に埋没してしまっていた。この解釈については2014年に文化庁から、障害学生支援室は大学図書館に類する施設であることが明確にされた。よってこれからはそれぞれの大学内で蓄積されたデータを全国的なサピエ・NDLネットにつなぎ、点から線、線から面へと教材保障の輪を拡げていくことが求められる。また、既に公表されている論文などの学術文献なども障害学生が容易に閲覧できるようにするなどのシステム構築も望まれる。
(5)公共図書館
 全国に約3200ある公共図書館には、地域の読書障害者や高齢者へのサービスを充実していってもらいたい。しかしサピエ・NDLネットへの接続状況を見ても、前述の学校図書館と同様、年会費の問題ですべての公共図書館が接続できているわけではない。また全国の公共図書館で障害者サービスを実施しているのは、国会図書館の調査によると66.2%ということである。先進的な図書館ではサピエ・NDLネットにつなぐだけでなく、デイジー図書を作成したり、図書を宅配したりしているところもあれば、3分の1の公共図書館は障害者サービスを全く実施していないということである。
 更に読書障害者の読書支援にも公共図書館の役割が期待される。例えばサピエ・NDLネットから図書データをダウンロードして読書するにしてもダウンロードの支援、パソコンやプレーヤーの操作方法の説明など、読書障害者にはさまざまなサポートが必要なわけだが、このような読書支援は1県1館の点字図書館だけではかなり難しい。よって、読書障害者へのアクセシブルな資料提供、読書サポートなどのサービスを法定化するなど、確実に障害者サービスを充実していくための促進策が必要である。また、近年公共図書館の予算は徐々に減らされてきているが、障害者・高齢者サービスを充実させていくための予算措置も課題である。
5.これからの読書障害者の読書を支える体制
 サピエ・NDLネットが視覚障害者のみならず学習障害者、上肢障害者などの読書障害者に広く認知され、利用されるようにするには国会図書館を核とし、学校図書館、大学図書館、公共図書館をネットワーク化し、全国津々浦々の読書障害者が身近なところでアクセシブルな媒体に触れられるような環境を整備していくことが求められる。その際、各図書館が負担しなければならない年会費を見直すと共に、安定的な財政基盤を構築する必要がある。また、これまで視覚障害者の読書を支えてきた視覚障害者情報提供施設(点字図書館)が、学習障害者や上肢障害者などにも利用できる施設であることを周知するためには名称、広報方法なども将来的に検討していかなければならない。また点字図書館にはこれまで蓄積してきた障害者サービスのノウハウを生かし、公共図書館の障害者サービスを支援するという役割も期待される。
 このように障害者の読書環境を総合的に改善していくには、関係する省庁が連携し、検討を進めていくことが望まれる。これまで述べてきた図書館の問題も視覚障害者情報提供施設(点字図書館)は厚生労働省、国会図書館は立法府、学校図書館、大学図書館、公共図書館は文部科学省の中の初等中等教育局、高等教育局、生涯学習政策局と所管が異なっている。マラケシュ条約は、アクセシブルなデータの国境を越えたやりとりを求めているわけだが、その窓口となる権限のある機関をどこにするか、どの図書館がどういう役割を担うかなども省庁をまたがって横断的に協議していかなければならない。また権限のある機関の業務効率を考えてもデータの一元管理が望ましいわけだが、さまざまなアクセシブルなデータの管理方法も検討すべき課題と言える。

声明文ここまで

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2015年2月25日 (水)

障害者総合支援法3年後見直しに関する意見書

厚生労働省は2013(平成25)年4月施行「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下、総合支援法)」の段階的な見直しを行うにあたり、論点整理のために学識経験者等から成る「障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ」を開催し、1月~2月に関係団体ヒアリングを行いました。DPI日本会議は2月4日に佐藤聡事務局長が下記意見書に基づきヒアリング意見を述べました。

▽障害者総合支援法3年後見直しに関する意見書(ワード)

以下意見書全文
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2015年2月4日
厚生労働大臣 塩崎恭久 様
特定非営利活動法人 
DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

障害者総合支援法3年後見直しに関する意見書

Ⅰ.見直しの基本スタンス
1.障害者権利条約の理念を踏まえた改正を
昨年、我が国も障害者権利条約を批准し、2月から発効している。権利の主体、障害の社会モデル、地域における自立生活の権利を規定している第19条等、権利条約の理念や規定を踏まえて総合支援法を見直していただきたい。
2.骨格提言の段階的・計画的実施を
国会答弁でもあったように骨格提言の段階的・計画的実施を進めていただきたい。

Ⅱ. 常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの 在り方
1.「常時介護を要する障害者等に対する支援」に関して 
(1)対象者(地域生活に困難のある障害者)
重度訪問介護を、医学モデルを前提とした利用制限を見直し、障害種別を問わず日常生活全般に常時の支援を要するすべての障害者が利用できるようにする。
具体的な対象者は、①重度肢体不自由者、②医療的ケアを必要とする者、③重症心身障害者、④強度行動障害をもつ者、⑤触法障害者、⑥重度知的障害でありながら行動障害関連項目の基準以下の者 、⑦盲ろう者等である。この中でも現行の重度訪問介護ではカバーできていない者について、今回見直しで対象に加えること。とりわけ⑥については、2014年度の重度訪問介護対象拡大における積み残しであり「地域生活における困難」を基準として対象に加えるべきである。→別紙参照
(2)支援内容
①シームレスに利用できる仕組みへ
介助が必要な障害者は、どこにいても介助は必要である。生活全般をシームレスに利用できる仕組みが必要である。支給量の範囲内であれば、利用範囲を制限しない、利用場所を制限しない仕組みにすべきである。
②通勤、通学、通年長期も対象とする
通勤は対象外となっているが、障害者の就労支援の観点からも必要性に応じて認めるべきである。通学と通年長期も多くの自治体で認められていない。移動の自由の保障は人間が生活をしていく上で基本的権利である。
③入院時もヘルパーを利用できる仕組みへ
医師が必要性を認めた場合には病院内でもヘルパーを利用できるようにするべきである。現在、入院時の切実なニーズに対して、地域生活支援事業で「コミュニケーション支援」に特化したサービスがいくつかの自治体で施行されているだけであり、非常に不十分な状況である。
④移動支援における車の運転について
地域の実情を考慮して、車(障害者の自家用車、障害者が借用した車)を移動の手段として認めるべきである。
⑤グループホーム内でのヘルパー
一律に制限を加えるのではなく、必要性に応じて利用できる恒久的な仕組みとすること。
⑥2人介助について
入浴や移乗の介助など、その必要性に応じて、「2人介助」を認めるべきである。
⑦一日の範囲を超える外出支援について
一日の範囲を超える外出については、行き先は国内外を問わず、認めるべきである。
(3)財源の仕組み
①かかった費用の1/2を国が負担する仕組みへ
現在、国庫負担基準によって市町村へ国の負担金が決まる仕組みになっている。このため多くの市町村は国庫負担金を超える支給を恐れて、国庫負担基準を目安に支給量に上限を設けている。国庫負担基準を改めて、かかった費用を国が負担する仕組みが必要である。
②重度訪問介護の単価引き上げを
重度訪問介護は重度障害者の地域生活を支える大切な仕組みであるが、単価が低いため介助者を十分確保できないという問題が続いている。これを改めるために重度訪問介護の単価を引き上げること。
2.「移動支援」について
  移動支援は自立支援法において地域生活支援事業に位置づけられた。その結果、利用時間数などで市町村格差が拡大し、利用先の制限なども起きている。自立支援給付にすべきである。
3.「就労」について
権利条約の規定に基づいて、社会的企業、社会的雇用の仕組みなど、一般就労と福祉的就労の両者の間に新たな選択肢をつくること、福祉的就労への労働法規の適用等が必要と考える。
(1)実態調査
骨格提言の内容に従って、まずは以下の実態調査を行うべきである。
①最低賃金の減額特例を受けている就労継続支援A型事業所
②最低賃金の1/4以上の工賃を支払っている就労継続支援B型事業所
③箕面市等、地方公共団体独自で最低賃金をクリアするための補助制度を設け、その下で運営されている事業所の他、新たに起業する事業所等。
④滋賀県及び札幌市等、地方公共団体独自の制度として障害者と障害のない者がともに働く職場形態となっている事業所。
(2)障害者雇用・就労にかかる労働施策と福祉施策を一体的・有機的に展開するための関係部署の連携の強化、体制の整備を
社会保障審議会と労働政策審議会が連携し、この課題についての協議の場を設置し、障害者団体や関係自治体などからなる協議体を設置していただきたい。
4.その他の福祉サービスの在り方
(1)障害の範囲
制度の谷間を埋めるのではなく、なくす視点にもとづいて検討すべきである。病名で対象を決める仕組みを改め、障害者総合支援法第4条の定義を障害者基本法の定義に改正し、心身の機能の障害および社会的障壁との相互作用によって生じる障害のある者すべてが利用できる仕組みに改めるべきである。

Ⅲ. 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方
1.支援区分への変更、判定方法の変更の影響に関する実態調査
骨格提言においてニーズアセスメントを経て協議調整モデルが提起されている。一方、昨年には知的精神障害者の区分変更率が高いことを受けて障害程度区分が障害支援区分として改定された。これら支援区分への変更、判定方法の変更の影響に関する実態調査を行い、その上で骨格提言実現に向けての議論をWGや審議会において進めること。
2.協議調整モデルへ
サービス利用等計画よりも支給決定の一勘案事項に過ぎないはずの障害支援区分によって利用できるサービスの種類、量、単価が決定されている。また、障害支援区分は医学モデルによるアセスメントであり、本人の意向やその人が望む暮らし方、ニーズアセスメントはできない。本人の意向を反映したサービス利用等計画に基づく支給決定を行うためには、骨格提言で示された協議調整に基づく支給決定のしくみへと移行していく必要がある。この仕組みを実現するため、試行事業等を行い、具体的な制度設計につなげていくこと。

Ⅳ. 障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方
1.意志決定支援
(1)障害者権利条約批准をふまえた法改正を
障害者権利条約を踏まえ、代行決定ではなく法的能力を行使するための意思決定支援について検討を進めていく必要がある。「必要とする支援を受けながら、意思(自己)決定を行う権利が保障される旨の規定」、「 障害者は、自らの意思に基づきどこで誰と住むかを決める権利、どのように暮らしていくかを決める権利、特定の様式での生活を強制されない権利を有し、そのための支援を受ける権利が保障される旨の規定」を設けるようにすること。
(2)意思決定支援に密接に関わるパーソナルアシスタンス制度の実現を
地域での日常生活における意思決定支援と密接に関わる支援であるパーソナルアシスタンス制度を実現すること。
2.成年後見制度
障害者権利委員会は、代替決定禁止説をとり、締約国に対して成年後見制度が承認する代替決定制度から自己決定(意思決定支援)制度への改正を促している。こういった動向等も踏まえ、成年後見類型の利用を最大限抑制し、どうしても代理決定が必要な場合については本人の同意を必要とする補助類型の利用を中心とすべきである。遷延性障害などでどうしても本人から直接意思の確認ができない場合についてのみ、例外的に成年後見類型、保佐類型の利用を認める方向での改革が必要である。
成年後見制度と意思決定支援の関係においては、本人に代わって何らかの決定をする者と本人の意思を尊重、確認しながら権利擁護活動を行う制度上の区別をするべきである。
「障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置」に関して、制度設計、改革のために、厚生労働省と法務省などの関係省庁との連携、障害者団体等・関係団体との間に障害当事者が過半数で構成される検討の場を設けるべきである。

Ⅴ. 手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障 害者等に対する支援の在り方
1.意思疎通
 パーソナルアシスタンス制度を目指して、「盲ろう者通訳・介助者派遣事業」を発展させるための財源を確保するために個別給付化するとともに、通訳介助者の養成を当事者が参加する形で、都道府県レベルで義務化すること。

Ⅵ. 精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方
1.「精神障害者に対する支援の在り方」について
(1)権利条約の理念にそぐわない病院の敷地内グループホーム制度を廃止すること
(2)地域生活基盤への集中的な財政の投入
長期入院者の退院促進・地域移行支援を進めるために、住居を含めた地域生活基盤整備づくりに集中的な財源を投入すべきである。
(3)障害特性を踏まえた多様性を持った新たな地域支援体制の構築
既存のサービス類型では利用しづらい人への柔軟な支援が可能な制度をつくる必要がある。さらに、重度訪問介護を精神障害者のニーズにあった利用ができるよう制度の範囲拡大・応用を含めて検討していただきたい。
(4)精神科病棟における入院時、入院中、退院時の権利擁護の仕組みの確立
(5)当事者による支援活動を更に充実させるための活動保障の充実
2.「高齢の障害者に対する支援」について
  自治体によっては、65歳になるとサービス水準の切り下げが強制される場合がある。介護保険併給の場合は、国庫負担基準が極端に低く設定されているためである。これを改めかかった費用の1/2を国が負担する仕組みが必要である。

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2014年7月11日 (金)

6月26日緊急集会「STOP!精神科病棟転換型居住系施設!!」報告

6・26緊急集会は天候にも恵まれ、3,200人が参加しました。また、当日カンパ664,371円、振り込みなど賛同カンパ208,182円を含めると計872,553円が集まりました。
お声かけ、ご参加くださった皆様、カンパをお寄せいただいた皆様、ご協力本当にありがとうございました。

日比谷野音ステージで行われたリレートークでは、実際に長期入院を体験された方がたをはじめ、当事者団体・支援者・医療専門職・障害者団体・国会議員らが次々に反対の意見を述べました。DPI日本会議を代表して平野みどりが、熊本県での差別禁止条例づくりに見られる障害種別を超えた連帯を紹介するとともに、病棟転換型施設を長期入院者の地域移行とする案が障害者権利条約に反するものであると述べました。

▽病棟転換型居住系施設について考える会ブログ
6・26緊急集会 当日の様子と写真
6・26緊急集会の報告とお礼、緊急アピール

しかし集会後の7月1日に開催された第4回「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」では、検討会内外での多くの当事者・家族・支援者の反対の声にもかかわらず、病棟転換型居住系施設を条件付けで容認する内容を含む「今後の方向性(取りまとめ)」(案)をもって終了しました。下記に同検討会資料と、この取りまとめ(案)に対し「考える会」が7月3日に発表した緊急声明を紹介します。

▽厚生労働省 第4回 長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会 資料

▽「病棟転換型居住系施設について考える会」緊急声明
(PDF版)(病棟転換型居住系施設について考える会ブログ)

厚生労働省 「取りまとめ(案)」は残念な内容となりましたが、実際に病棟転換型居住系施設を実行するのは都道府県であり、今後、地域において断固として病棟転換型居住系施設を作らせないための自治体への訴え、病院敷地内ではない地域への退院移行施策の充実が鍵になります。

DPI日本会議ではこの問題に関して今後とも取り組みを進めていきます。引き続きのご協力どうぞよろしくお願いします。

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2014年5月20日 (火)

ODA大綱見直しに対する要望文を提出

先進国経済の疲弊、新興ドナー国の台頭、民間セクターの開発資金の増加、地球規模の課題の多様化・複雑化など、ODA(政府開発援助)をとりまく環境・潮流が変化する中、近年「国益」を全面に出したODAの戦略的・外交的な活用がドナー諸国内で主流となっています。
昨年からカナダ、オーストラリアの国際開発庁(CIDA、AusAID)がそれぞれ外務国際貿易省、外務貿易省へ統合されて外交、貿易、開発援助を一元化するなど、民間セクターの海外進出にODAを活用する動きも目立ってきています。

2003年に発表された日本ODA大綱には民間資金や国益という文言は入っていませんでした。外務省は3月31日、岸田文雄外相の下に「ODA大綱を見直す有識者懇談会」を設置し、6月に報告書をまとめ、年内に新たなODA大綱を閣議決定することを発表しました。DPI日本会議はODA政策協議会等を通じて、これまで開発戦略において障害(者)の課題を主流化することを訴え続けてきました。経済成長が持続的な開発において重要であることはもちろんですが、私たちは短期的な自国の利益のみを優先する姿勢だけでは、被援助国から真に尊敬を得られず、有効なパートナーシップを築けないと考えます。私たちは10年以上継続しているアフリカ障害者研修により、息の長い支援を通し着実にパートナーシップを築き人材・団体育成を行ってきました。特に、民間資金では解決が困難な障害分野など、開発過程において周縁化されやすい人々に対し配慮した、経済成長偏重ではないODAの実施を強く訴えます。

2015年で終了するミレニアム開発目標後の、新たな国際的開発枠組みへの障害者問題のインクルージョンを求める動きと並行して、新ODA大綱に対し障害者問題への取組みの明記を求めるため、DPI日本会議は以下の要望書を提出します。(※1)

また今回の見直しでは、安倍政権が「積極的平和主義」の下、集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則の見直しなどで安全保障政策の抜本的な転換を掲げる中、ODAの軍事目的での使用を禁じた規定を見直し、外国軍への支援を可能にする方向で検討に入り、民生分野の支援を貫いてきたODA政策でも軍事利用を認めれば、国内外で反発を招く可能性もあるという報道もなされています(朝日新聞4月1日)。

ODA大綱はこれまで「軍事的用途および国際紛争助長への使用を回避する」ことを原則として掲げてきました。日本のODAは軍事的なカラーのない支援であるからこそ、イスラム教国に対する支援等において対等かつ中立的な立場で行ってくることができたという面があります。こうしたこれまでの実績や利点を放棄し、ODAの原則を緩和することに対し、私たちはODAが掲げてきた「人間の安全保障」の理念からの退行になりかねないと懸念することから有志の市民社会団体で提出する共同声明に賛同します。(※2,3)

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2013年12月27日 (金)

千葉県入所施設「袖ヶ浦福祉センター養育園」入所者虐待・死亡事件に対する声明

平成25年12月20日
特定非営利活動法人 DPI(障害者インターナショナル)日本会議 
議長 山田 昭義

2013年12月13日の新聞報道によって、千葉県袖ケ浦市の県立障害者支援施設「袖ヶ浦福祉センター養育園」で、利用者に対する職員からの暴行により、入所者の19歳の少年が死亡し、また、同園の男性職員5人が、少年を含む入所者計10人を繰り返し虐待していた疑いが発覚した。

言語道断の決して許すことのできない事件であり、まず、虐待の被害者の方々ならびにご家族に心から哀悼の意を表すとともに、設置者たる千葉県をはじめ、千葉県社会福祉事業団、袖ヶ浦福祉センターに大きな怒りを持って抗議する。これら関係者の責任は極めて重大であり、原因と責任の所在を明確にするとともに、早急に被害者の方々、同施設に入所されている方々、ご家族の心的なケアを行うべきである。加害者が相応の刑事上・民事上の責任を負わなければならないのは言うまでもない。

障害者虐待防止法が昨年10月より施行され、様々な取り組みが全国で進む中、防止義務の責任主体の一つである自治体である千葉県の責任は重大である。さらに、今年12月4日には、障害者権利条約批准案が国会で承認された。同第16条は「搾取、暴力及び虐待からの自由」を規定し、虐待の防止と虐待を受けた被害者の身体的及び心理的な回復及びリハビリテーション等の措置が締約国の義務とされている。
さらに同第19条では障害のない人と平等にどこで誰と住むか選択でき、特定の生活様式(particular living arrangement)での生活が義務付けられず、地域生活を支えるための支援を締約国に課す地域における自立した生活の権利条項も規定された。
これは「脱施設条項」ともよばれている。
そして、間もなく締約国となる日本にこれらを遵守する義務が生じる。

DPI(障害者インターナショナル)日本会議は、どんなに重い障害を持つ人でも障害のない人と共に平等に地域で自立した生活をすることができる社会づくりのために、障害種別を超えた団体として活動してきた。私たちは入所施設での虐待はなくならないと考える。
千葉県に対して、養育園を閉鎖し、入所されている方々を地域に戻し、地域で安心して生活することができる条件整備を行う検討を求めたい。

▽DPI声明全文(ワード)

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2013年12月11日 (水)

障害者権利条約の国会承認にあたってのDPI声明

去る12月4日、「障害者の権利に関する条約(以下、権利条約)」の批准が国会に於いて全会一致で採択され、日本の権利条約の批准がついに確定しました!以下、権利条約の国会承認に当たってのDPI日本会議声明を掲載します。


2013年12月4日
障害者権利条約の国会承認にあたっての声明
特定非営利活動法人 DPI日本会議
議長 山田昭義

2013年12月4日、参議院本会議において、「障害者の権利に関する条約(以下、権利条約)」の批准承認案を全会一致で採択し、事実上、日本の権利条約の批准が確定した。

国連における条約交渉過程から深く関与してきたDPI日本会議は、この国会承認を心から歓迎し、ご尽力頂いたすべての関係者の皆様に心から感謝の意を表明する。

権利条約は2001年の国連総会でその検討が決まり、その後8回の障害者権利条約特別委員会(以下、特別委員会)等を経て、2006年12月13日に国連総会で満場一致で採択された。DPI日本会議は他の障害者団体と協力し、当会議の役員であった東俊裕氏を日本政府代表団顧問とし、また、のべ200人以上に及ぶNGO代表団を組織して特別委員会等で活発なロビー活動を行ってきた。

そこでのスローガンは“Nothingabout us withoutus!”(「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」)であり、障害当事者の参画がこの条約の土台を作り上げたといえる。

日本政府は2007年9月28日に権利条約に署名し、2009年3月には批准にむけて動いた。しかし私たち障害者団体は当初から、まず基本的な法制度の条件整備を行ったうえでの批准を求めており、拙速な批准には反対していた。さまざまな働きかけを行い、関係者の尽力で法制度の整備抜きの批准を食い止めることができた。

その後、障害当事者の実質的な参画の下で、権利条約批准のための障害者制度改革が始まり、障害者基本法の改正、障害者総合支援法と障害者差別解消法の成立、障害者雇用促進法の改正など、課題を残しながらも一定の成果を上げてきた。そしてこのたびの批准の動きにつながったことの意義は大変大きい。

しかし、批准で一段落ということでは決してないということを強調したい。批准までが第1のステージだとすれば、これからは権利条約の完全実施という第2のステージを迎える。権利条約の目的である障害のある人とない人が差別なく、分け隔てられることなく地域で安心して生活できる。インクルーシブな社会の実現は、これからが正念場である。

施設や病院における障害者の社会的入所や社会的入院の解消、障害のある子どももない子どもも共に学ぶインクルーシブ教育制度の実現、強制入院制度の見直しや意思決定支援制度の確立など、課題は多い。障害者基本法や障害者総合支援法、障害者虐待防止法の見直しへの取り組み、障害者差別解消法および改正障害者雇用促進法の施行に向けた取り組み等が目の前に迫っている。

私たちDPI日本会議は、改めてこれまでの関係各方面の皆様のご尽力に敬意を表しつつ、今後も、他の障害者団体や市民団体等と協力しながら、第2ステージである権利条約の完全実施に向けて全力を尽くすことを決意として表明する。

以上

▽障害者権利条約の国会承認にあたっての声明(DPI日本会議)

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