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2008年12月19日 (金)

社会保障審議会・障害者部会報告とそれに対する見解

 厚生労働省社会保障審議会・障害者部会では障害者自立支援法の「3年後見直し」に向けて議論を重ねてきました。去る12月15日、最終的な議論が行われ、報告がまとめられました。

厚生労働省社会保障審議会・障害者部会報告(報告はPDFファイルです)

 この報告に対し、DPI日本会議も加わっている「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」では見解を17日付で発表いたしました。「報告」は当初言われていた抜本的な見直しからはほど遠く、かなりトーンダウンしたものになっています。今後、この「報告」に基づいて改正議論が行われるものと思われますが、私たちとしては、引き続き厚生労働省等に強く働きかけを行っていきます。

「全国大行動実行委員会」の見解(PDF形式)

下をクリックしていただいても読むことができます。

2008 年12 月17 日

「社会保障審議会障害者部会報告~障害者自立支援法3年の見直しについて~」に対する見解

「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動」実行委員会

1.12 月15 日、第49 回社会保障審議会・障害者部会(以下、障害者部会)において、「社会保障審議会障害者部会報告~障害者自立支援法3年の見直しについて~(案)」が示され、最終の議論が行われ、同16 日に「報告」としてまとめられた。
 私たち「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動・実行委員会」は、障害者自立支援法(以下、「自立支援法」)の検討・制定から施行後2年半を経た今日まで、一貫して、「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」「地域生活をあきらめない!」と訴え活動を行ってきた。その立場から、「報告」に対する見解を以下に示すものである。

2.「自立支援法」の施行によって、障害者の地域生活を危機に陥れる問題が噴出した。原則1割負担を課す応益負担に加えて、障害程度区分を核にした支給決定の仕組みの導入と重度長時間介護サービスの切り下げ、移動支援事業の地域格差拡大、グループホーム・ケアホームの運営の困難化等、障害者の地域生活に関わるあらゆる分野で深刻な問題が生じてきた。
 また、地域での生活を支えるための重度訪問介護などのホームヘルプ事業は深刻な人材不足に陥っており、支給決定がされてもヘルパー・事業所が見つからずサービス利用ができない事態まで生じている。
 こうした中、「自立支援法」の「一からの見直し」を求める声と行動はかつてない盛り上がりを見せてきた。そして、昨年12 月には与党からも「抜本見直し」が打ち出されるに至った。また、2006 年12月には国連で障害者権利条約が採択され、今後、日本政府も批准に向けた準備が求められる中、同条約が提起している社会モデルに基づく障害の概念や地域生活の権利との整合性をどう担保してくのかも大きな課題であった。

3.しかし、上記の「報告」は、私たち障害者が求める「一からの出直し」どころか、「抜本見直し」にも応えたものとなっていない。それどころか、2005 年の「自立支援法」成立時の附則や附帯決議すら無視したものとなっていると言わざるを得ない。
 周知の通り、「自立支援法」の附則第3 条での見直し事項は、「障害児の支援」「障害者の範囲」「所得保障の確保」の3点があげられていた。
 そして、「障害者の範囲」について附帯決議では、「…発達障害・難病などを含め、サービスを必要とするすべての障害者が適切に利用できる普遍的な仕組みにするよう検討を行うこと」とされていた。ところが、今回の「報告」では、「難病を身体障害者に含めることについては慎重に検討すべき」「身体障害者手帳を所持しなくても、障害者自立支援法のサービスの対象とすべきという点についても、慎重な検討が必要」とされ、民意を反映しないまま、検討をさらに先送りするための報告となっている。「発達障害・難病などを含めサービスを必要とする全ての障害者が適切に利用できる普遍的な仕組みにするよう検討」と明らかに反した結論であり、待ったなしの当事者の生活等を放置し続ける、とても認められない報告となっている。
 また、同様に、「所得保障」についても、附帯決議では「3年以内にその結論を得ること」とされていたにもかかわらず、障害者基礎年金の引き上げや住宅手当などについても「検討していくことが必要」とした。
 「障害者の範囲」や「所得保障」について結論を得ることが求められていたにもかかわらず先送りをしたのでは、いったい何のための議論だったのかとの疑問を禁じ得ない。
 12 月15 日の最終議論でも、複数の委員から「抜本見直しといえるだけの結論になっているか疑問」との意見が出されたのも当然である。

4.さらに、何度か委員と事務局との間で激論となったのが、利用者負担をめぐる問題であったが、この点についても「現行の応益負担の仕組みを維持した上で、軽減措置を来年4月以降も継続する」という程度の結論になった。委員からは、「応益から応能負担に戻すべき」「生存ニーズや文化的な生活のための支援は社会全体で保障していくべきで利用者負担を求めるべきではない」といった提起に対しても、事務局から「軽減措置により相当応能的性格のものになっている」との現状説明があっただけである。
 もし、「すでに応能的なものになっており、かつ、今後も継続する」というならば、なぜそれ程「応益負担の維持」にこだわるのか、「介護保険との将来的な統合(吸収合併)」の 余地を厚生労働省としては残しておきたいのではないかとの疑念を生じさせる。

5.障害者の地域生活にとって不可欠なサービス確保の問題についても、肝心な問題は未解決のままになった。
 一つは、障害程度区分と連動した訪問系サービスの国庫負担基準の廃止(=市町村が実際にサービスに要した費用の2分の1の義務負担)の問題である。障害程度区分に基づいて国庫負担基準が設定されているために、重度障害者にとって必要なサービスを得ることを困難にし、実際サービスの引き下がりが生まれてきた。だが、「報告」では国庫負担基準を継続することを前提にした記述にとどまった。
 今回、支給決定に先立ってのサービス利用計画案作成等が示されているが、国庫負担基準の仕組みを見直さないままでは、障害当事者のニードに基づいたサービス利用計画案が作成され、支給決定の際に尊重されるのか疑問である。
 二つ目は、障害者の地域生活・社会参加にとって不可欠な移動支援についても、重度の視覚障害者向けの支援のみ個別給付化の検討の対象となっているだけで、知的障害者等の移動支援についてはふれられていない。また、地域生活実現の上で重要な「見守りも含む長時間のサービス」である重度訪問介護についても、知的障害者や精神障害者への拡大の方向は出されていない。
 こうした地域生活を実現していくため、十分なサービスの量や種類を確保していくための見直しが不十分な中では、「施設や病院からの地域移行」が展開していくとの見通しを持つことは困難である。
 こうした点について、今後、国会審議も含めた一連の見直し議論の中でも取り上げられることが必要だ。

6.一方、施策や運用レベルの事項でも、今後、どのような形で実施されていくのか、不明な部分も多い。
 例えば、「地域における自立した生活の支援」であげられている、「施設・病院からの地域移行給付」「入所・入院中の段階から、宿泊等の地域生活の体験ができるような仕組み」等について、その実施に
はピアカウンセラーなど障害当事者の役割はきわめて重要となる。また、障害者ケアマネジメントについて、エンパワメントやセルフマネジメントの重要性が確認され、「障害者同士によるピアサポートとその自主的な活動の支援」もふれられているが、これがどう具体化されていくか、また、相談支援の中での位置付けや具体的な役割も、今後明らかにされなければならない。
 身体障害者のグループホーム・ケアホームについても、本人の意志に反して利用を進められないようにするとされたが、その趣旨が徹底されるよう対策を講じること。その際、あくまでヘルパーを使っての在宅生活を基本とし、ケアホームにおいてもホームヘルプを使いながらの生活が保障されるように、多様な選択肢を確保した上で本人が選択できるようにすることを周知徹底すべきである。
 深刻なヘルパー不足のためにサービスの利用すら困難になりつつある重度訪問介護等についても報酬単価の大幅引き上げをはじめとした人材確保策が検討されなければならない。
 これら、いずれも障害当事者・現場の声に基づいた丁寧な検討がなされるべき事項であり、「報告」が言う「当事者中心に考えるべきという視点」からの検討を求める。

 以上、述べてきたように、今回示された内容は、私たちが求める「一からの見直し」どころか、「障害者の範囲」等国会が求めた事項すら先送りしているものであり、障害者権利条約の批准に向けた法整備の上からも大きな禍根を残しかねないと断じざるを得ない。 私たちは、同法の3年後見直しが、「報告」に示されている水準の見直しに決して止まることのないよう、「一からの見直し」を求めて、政党・国会議員への働きかけをはじめ様々な活動を展開していく決意を明らかにするものである。

以上

【連絡先】
「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動」実行委員会
(全国自立生活センター協議会内)
〒192-0046 東京都八王子市明神町4-11-11-1F
TEL:0426-60-7747 FAX:0426-60-7746

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