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2006年9月12日 (火)

第8回障害者の権利条約特別委員会(8・了)

8月25日(金) 緊迫する最終日3 ―新たな歴史が始まった―

●最後は投票で
 でも、すでに7時を過ぎました。緊張が漂っています。難問、前文s-bisの「占領下における危機的状態からの障害者の保護」の問題が残っています。イスラエル・レバノン情勢を反映した政治的な問題なのでたちが悪い。当初は第11条「危機的状況」条項に「外国による占領」を挿入するというアラブ諸国からの提案がされたものでした。譲歩したアラブ諸国の前文に移すという再提案に対しても、アメリカやイスラエルなどが反対し、こう着状態が起きていたのでした。そこで、業を煮やしたマッケイ議長が投票による解決を行うということになったのです。この投票のために会議室を移動したのです。投票というのは興味深い。窓側にかかっていた大きな壁のカーテンが自動的に開き、全加盟国の投票結果を示す電子投票版がでてきたのです。おおーっ。一斉に会場のカメラのフラッシュがたかれました。投票の結果、文言を「残す」が102、棄権8、反対(削除ということ)5で、「外国の占領下~」という文言を残すという意見が圧倒的に勝利を収めました。ちなみに、反対した国は、日本、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イスラエルの5カ国です。障害者の人権保障を目的とする本条約に政治的課題を持ち込むことに反対といった理由のようでした。うーん、アメリカ追従ってわけでもないだろうけどねー。
 これをもって、特別委員会は、2006年8月25日午後8時、最後の難関を乗り越え、条約案全文を採択したのでした。

●歴史は動く
 条約草案を含む特別委員会報告書が採択されると、国連総会の議長が姿を見せました。3分間の起立拍手の後、「歴史が作られたのです」と祝辞を述べました。そして祝辞の嵐。ルイス・ガレゴス前議長へ、DESA事務局へ。マッケイ議長への賛辞も次々と述べられましたが、彼は静かにうつむいていました。さまざまな思いがよぎっているに違いありません。
 NGOのメンバーとしてうれしい体験もできました。政府代表団がNGOの参加者に対し起立拍手を送ったのです。これは、“nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)”という声を上げて、条約草案の内容に対し多大な貢献をしたとして謝意を示す意味でした。IDCとして発言したEDFのステファンは、12条と17条に関して残念であるというコメントを出しましたが、世界盲人会連合会長のキキ・ノルドストロームのスピーチは深い感動を呼ぶものでした。
 
 今後の流れを見てみましょう。第8回特別委員会はいったん中断されるという形になります。そして、第61期国連総会に条約の最終草案を提出するために、起草グループ(drafting group)が設けられ、文法上の文言の調整や各公用語への翻訳などが行われます。その後、中断していた第8回特別委員会が再開されて、起草グループで完成した条約案文を承認して、社会・人権・人道問題を扱う総会第3委員会に付されます。そして、12月までに総会に正式の条約案として提案され、問題が無ければ正式に条約として採択され、20カ国以上の署名・批准が行われた時点で発効となります。

 DPI日本会議は、2002年から積極的にこの条約策定過程に関わってきました。途中からはJDFの仲間とともに、障害当事者の「われら自身の声」を少しでも反映させるべく努力してきました。条約に関する日本会議のポジションペーパーを作成し乗り込んだESCAPのバンコクでの会議、バンコク・レコメンデーション、北京の会議・・・。第2回特別委員会における当時のIDA(国際障害同盟)のリーダーたちの「nothing about us without us!」の声。作業部会、そして今への道筋をつけた議長草案。
 第2回から政府代表団顧問として活躍した日本会議の常任委員で車いす弁護士の東さん、本当にお疲れ様でした。さまざまな草の根の障害者運動に関わってきたことが法律上の知識に説得力を持たせたため、さまざまな制約の中でもあれだけの意見を政府にアドバイスできたのかなーと思います。13条の「司法のアクセス」条項、19条の「自立生活」条項は東さんをはじめとする日本政府・NGOの貢献が大きいと思います。他に、JDF条約委員会の委員長で日本会議の金政玉さん、作業部会を始め、国内取りまとめ、お疲れ様でした。大きな枠を作り上げ、政府への働きかけを共にしたDPI以外のJDFの方々、劣悪な環境の下、条約の意義を感じ取ってがんばってくださった通訳さん、事務局のスタッフ、本当にお疲れ様でした。事務方としても皆様のご協力に感謝申し上げます。

 歴史は動きました。そして土俵は国内に移されます。これからが勝負です。知恵を集めて団結してわれら自身の声をあげていきましょう。

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