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2006年9月12日 (火)

第8回障害者の権利条約特別委員会(7)

8月25日(金) 
緊迫する最終日2 

●進む採択
 午後の審議は通常3時から始まりますが、今日も、昨日やおとといと同じく公式会議はなかなか始まりません。そして4時ごろ、投票のシステムがある会議室に場所を移すということで、何百人もの人がぞろぞろ移動しました。第4会議室から第3会議室へ。実はこの第3会議室は、第1回特別委員会が開催されたなつかしい会議室! でも、この会議室はアクセスや情報保障に問題がありました。政府代表団席のある1階は、車いすが政府代表団の席への通路に入れないので、東顧問が日本政府の席に近づけないし、英語のイヤホンも聴けず・・・。政府の人にもう少し配慮して欲しかった・・・。当時の状況は非常にばたばたでしかたなかったというのも理解はしていますが。1階席と、車いすで入れない2階席にJDFのメンバーも分かれてしまい、私は行ったりきたりでした。
 4時40分ごろにようやく公式会議が始まりました。こりゃ、今日中に終わらないかも。長瀬さんとJDFとしてもそうした事態に対処する事務局体制を考えなくては、なんていう話をしていました。通訳さんへの配慮、水や食べ物の調達、夜の打ち上げ会場(JDF御用達日本料理店「やきとりイースト」(笑))をキャンセルしようか、どうしようか、などなど。

 さて、審議は第24条「教育」条項へ。採択!先週もお伝えしたとおり、この特別委員会は、日本が原則統合教育への第一歩を鮮明にした歴史的会議となりました。やっとだ、とはいえ日本政府の賢明な判断に拍手しましょう!でも、いろいろあるだろうし、これからもがんばらなくては。
 第8条「啓発」条項。この条項も含め、ジェンダー条項といわれるものがいくつかあります。宗教や文化に根ざす根深いというか原理的に和解が不能な問題という感もあり、最後までもめました。第1項のバラグラフ(a)で家族レベルという文言の挿入とパラグラフ(b)において「ジェンダー」から「セックス」に文言を変えて採択。

 第27条「雇用・労働」条項。EUが譲歩して採択。この27条は、雇用における合理的配慮の提供や差別の禁止を謳っており、遅々として進まない障害者雇用の拡大になんとしてでも利用していきたい条項です。
 第29条「公的活動への参加」条項、採択。第4条「一般的義務」採択。第16条「搾取・暴力からの自由」採択。

 次は第6条「障害をもつ女性」条項です。採択。個別の条項については、拍手が一番長かったと思います。第3回特別委員会で韓国政府が提案してから、さまざまな議論がされてきました。なぜ女性だけなのか、先住民など、ほかにもさまざまな少数集団があるのに・・・、という議論です。当初、NGOやアフリカ諸国は賛成していましたが、どうみても旗色は悪く、独立条項は無理っぽかったのですが、韓国政府のねばりづよいロビーと、英語もそれほど得意ではない韓国のNGOの仲間がIDCの他の仲間と協力しながら行ってきた長い間の努力が実った瞬間でした。ちょっと感動してしまった・・・。

 採択は進みます。
 第12条「法の前の平等」条項に移りました。この条項は、法的権利の保障を規定しており、いってみれば一つのパラダイム・シフト条項とでもいいましょうか。JDFの意見書作成においてもさまざまな意見を交換した想いの錯綜する条項で、後見人制度にも関わってくる大きな問題となる条項です。後見人の存在の承認を前提としたパラグラフの削除をIDCやJDFでは主張していましたが、ファシリテーターグループではパラグラフ2に脚注をつける報告書を作成し、条文の内容は修正議長草案のとおり、セーフガードについての言及をしているパラグラフは残すという形で採択されました。精神医療ユーザー・サバイバーネットワークのティナ・ミンコウィッツさんはブーイングでこの採択に答えていました。この脚注というのは、大陸法の法体系を持つ国にとって、ある人達に対しては行為能力を一定の条件の下で制限を認めるもので、今の後見人制度をそのまま容認できる解釈が可能なものです。JDFとしても脚注についてはいろいろ考えなくてはなりません。

 前文に移りました。ベネズエラが「先住民」への言及を確認したところEUが「聞いていない」といってとりあえず反対しましたが。最終的にはEUが妥協し、前文当該項については採択されました。
 第17条「個人のインテグリティ」。「身体精神知的をふくむ全ての障害者は他のものとの平等を基礎として・・・」という短い柱書きのみの案が提出されました。紛糾しましたが、議長が悲壮な合意形成を呼びかけて採択されました。本来は非自発的な治療に関する条文で、修正議長草案には反発が多かったのですが、結局短く収まりました。

 続いて第23条「家族」と第25条「健康」条項です。これらは、「性と生殖の権利」、「セクシャリティの経験」などの内容を含み、懸案のジェンダー条項の一つでした。アラブとバチカンとアメリカの要求に屈した形で、削除ないし変更を受けて採択されてしまいました。ジェンダー条項でがんばってきたNGOの仲間たちはくやし涙を流していました。
 第1条「目的」条項に移りました。障害の定義に関連して、2条への規定は困難であり、前文と第1条に書き込むことになったのですが、中国が「障害者とは~」の定義の部分で環境要因に言及している部分の削除を当初提案していましたが、それを取りさげ採択されました。

 第2条「定義」条項です。ここもいろいろな論点があるところです。今週初めにお伝えしたとおり、中国が言語の定義を削除すべきだという提案をしていましたが、無事に修正議長草案通りとなりました。問題もあります。「障害に基づく差別」の定義で「直接差別、間接差別」の文言が削除された形で合意されました。これは日本政府のロビーの結果です。間接差別は、欧米においてはほぼ確立された概念といえるでしょう。日本政府が率先して文言削除のロビーイングを行ったということはJDFとしては非常に残念なことです。この結果を、実質的には直接的な差別よりはるかに多いと思われる、そうではないなんらかの不利益な取り扱いや差別の除去へのブレーキとならないようにしなければなりません。日本政府は間接差別も「すべての形態の差別」に含まれるとしていますが、ならば、そのように国内で取り組むべきですね。なんにせよ、日本政府のロビーでほぼ、挿入が決まりかけていた「間接差別」が削除されてしまったのは、なんとなく、すっきりせん。今後、日本の障害団体がしっかりと取り組むべき最重要課題の一つとなりました。

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